肝臓がんの概要と予防方法

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 肝臓がんとは?
  2. 症状
  3. 原因、リスク要因
  4. 疫学・統計
  5. 予防方法
  6. 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
  7. ネットニュースによる関連情報

肝臓がんとは?

・肝臓のがんは、肝臓にできた”原発性肝がん”と別の臓器から転移した”転移性肝がん”に大別される。
 
・原発性肝がんには、肝臓の細胞ががんになる”肝細胞がん”と、胆汁を十二指腸に流す胆管の細胞ががんになる”胆管細胞がん”、他には、小児の肝がんである肝細胞芽腫、成人での肝細胞・胆管細胞混合がん、未分化がん、胆管嚢胞腺がん、神経内分泌腫瘍などのごくまれながんがある。
 
・日本では原発性肝がんのうち肝細胞がんが90%と大部分を占め、肝がんというとほとんどが肝細胞がんを指す。

がんとは?

症状

・肝臓は”沈黙の臓器”と呼ばれ、初期には自覚症状がほとんどない。
・肝がん特有の症状は少ないが、進行した場合に腹部のしこりや圧迫感、痛み、おなかが張った感じなどを訴える人もいる。

原因、リスク要因

・肝炎ウイルスの持続感染によって、肝細胞で長期にわたって炎症と再生が繰り返されるうちに、遺伝子の突然変異が積み重なり、肝がんへの進展に重要な役割を果たしていると考えられている。
・日本では、肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染、約15%がB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に起因すると試算されている。
・肝炎ウイルスが体に侵入しても、”肝炎”という病気にならず、健康な人体と共存している場合もある。(無症候性キャリア)
・ウイルス感染以外の肝がんのリスク要因として、大量飲酒と喫煙、さらに食事に混入するカビ毒のアフラトキシンが確実とされている。
・最近の傾向として、アルコール摂取歴がほとんどない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎)が原因で肝硬変、肝がん発がんに至るケースが増えてきている。
・最近の研究において、糖尿病患者でリスクが高いことや、コーヒー飲用者でリスクが低いことを示す報告がある。
・肥満、糖尿病、運動不足もリスク要因であろうとのエビデンスが多数報告されている。

疫学・統計

・予測がん罹患数(2014年)では、がん全体に占める割合が、男性は6%、女性が4%となっている。
・年齢別にみた肝臓がんの罹患は、男性では45歳、女性では55歳から増加し始め、70歳代に横ばいとなる。
・罹患率、死亡率は男性の方が高く、女性の約2~3倍。
・肝臓がん罹患率と死亡率の年次推移を生まれた年代別にみると、男女とも1935年前後に生まれた人で高くなっている。これは、1935年前後に生まれた人が、日本における肝臓がんの主な要因であるC型肝炎ウイルス(HCV)の抗体陽性者の割合が高いことと関連している。
・日本国内の死亡率の年次推移は、男女とも最近減少傾向にあり、罹患率は男性で減少、女性で横ばい傾向にある。

予防方法

・肝炎ウイルス感染予防と、肝炎ウイルスの持続感染者に対する肝がん発生予防が中心となっている。
・C型、B型の肝炎ウイルスは、日常生活で感染することはまずない。しかし、C型肝炎ウイルスが発見され検査法が普及したのは1990年代以降で、それ以前は注射や輸血などの医療行為を介して感染しているおそれがある。
 現在多くの自治体で肝炎の無料検査を行っているので、40歳以上の人は自覚症状がなくても一度は肝炎ウイルスの検査を受ける事を推奨。
・肝炎ウイルス感染が判明した場合、特に禁煙と節酒を心掛けることが重要。
 肥満や運動不足の解消や、血糖コントロールも有効だと考えられる。
・新たな感染を防ぐには、性行為の際にはコンドームを使用すること、歯ブラシ、カミソリなど他人の血がついている可能性のあるものは共有しないことなどの注意が必要。
 
※野菜・果物のがんに対する効果については以下の記事参照。
・果物の効用
野菜、果物全般の健康効果の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
カロテノイド、リコペンの概要、効果、健康影響

多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
 

●魚、n-3不飽和脂肪酸摂取量と肝がんとの関連について
 
・アンケートから計算されたn-3およびそれぞれ個別の不飽和脂肪酸摂取量によって、5つのグループに分けて、最も少ないグループに比べ、その他のグループで肝がんのリスクが何倍になるかを調べた。
 
○結果
・n-3不飽和脂肪酸を多く含む魚、および、EPA, DPA, DHAといった魚に多く含まれているn-3不飽和脂肪酸を多くとっているグループほど、肝がんの発生リスクが低いことがわかった。
 
○推察
・n-3不飽和脂肪酸には抗炎症作用があることが報告されているが、肝がんになる人の多くは、B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎を経て発症するので、n-3不飽和脂肪酸は慢性肝炎への抗炎症作用をとおして肝がんの発症をおさえるのかもしれない。
・n-3不飽和脂肪酸にはインスリン抵抗性を改善する作用があることも報告されている。近年、多くの疫学研究で、糖尿病や肥満が肝がんのリスクをあげることが報告されていることから、インスリン抵抗性は肝がんのリスクと考えられている。肝がんリスクの低下は、抗炎症作用に加えて、n-3不飽和脂肪酸によるインスリン抵抗性の改善によるのかもしれない。

ネットニュースによる関連情報

●鶏肉、魚の摂取によって肝がんのリスク低下?
 
・摂取量の多寡に応じてカテゴリ分けし最も高い群を最も低い群と比較した結果、赤肉の摂取の相対リスクは1.10、加工肉および総肉摂取量の相対リスクは1.01だった。
・白肉および魚の摂取はリスクを低下させ、白肉の相対リスクは0.69であり、魚の相対リスクは0.78であった。

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