※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
- 部位別がん罹患数
- 食塩
- 野菜・果物
- 熱い飲食物
- 加工肉・赤肉
- コーヒー
- 飲酒
- 体型(BMI値)
- 喫煙
- 身体活動
- 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
- ネットニュースによる関連情報
食塩
・日本人を対象とした研究で、食塩摂取量の多いグループで胃がんのリスクが高まることが男性で示された。
女性でははっきりした関連は見らなかったが、いくら、塩辛、練りうになどの特に塩分濃度の高い食品をとる人ほど胃がんのリスクが高いことは男女共通して見られている。
・漬物、塩魚、塩蔵魚卵などの塩蔵食品はがん全体、また、胃がんのリスクを上げることが示されている。
・ナトリウム全体としてはがんとの間に特に関連は認められていない。
・食塩の摂取量を抑えることは、日本人で最も多い胃がん予防に有効であるのみならず、高血圧を予防し、循環器疾患のリスクの低下にもつながる。
・食事摂取基準として、男性は9g未満、女性は7.5g未満を1日あたりの目標値として設定。国際的には、5~6g未満が目標とされているが、日本食の特性を考えると、困難な目標と思われる。
・食塩に起因するがん罹患および死亡の割合はそれぞれ男性で1.9%, 1.5%, 女性で1.2%,1.2%と試算されている。
・2009年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の食塩摂取量の平均値は男性11.6g、女性9.9グラムで、男性9g以上は70%、女性7.5g以上は72%と推計されている。
以下の記事も参照。
ミネラル ナトリウムの概要の”ナトリウムとがんとの関連”
女性でははっきりした関連は見らなかったが、いくら、塩辛、練りうになどの特に塩分濃度の高い食品をとる人ほど胃がんのリスクが高いことは男女共通して見られている。
・漬物、塩魚、塩蔵魚卵などの塩蔵食品はがん全体、また、胃がんのリスクを上げることが示されている。
・ナトリウム全体としてはがんとの間に特に関連は認められていない。
・食塩の摂取量を抑えることは、日本人で最も多い胃がん予防に有効であるのみならず、高血圧を予防し、循環器疾患のリスクの低下にもつながる。
・食事摂取基準として、男性は9g未満、女性は7.5g未満を1日あたりの目標値として設定。国際的には、5~6g未満が目標とされているが、日本食の特性を考えると、困難な目標と思われる。
・食塩に起因するがん罹患および死亡の割合はそれぞれ男性で1.9%, 1.5%, 女性で1.2%,1.2%と試算されている。
・2009年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の食塩摂取量の平均値は男性11.6g、女性9.9グラムで、男性9g以上は70%、女性7.5g以上は72%と推計されている。
以下の記事も参照。
ミネラル ナトリウムの概要の”ナトリウムとがんとの関連”
野菜・果物
●がんとの関係
・食道がんのリスクが低くなるのは”ほぼ確実”、胃および肺がん(果物のみ)のリスクが低くなる”可能性がある”。
・野菜・果物と脳血管疾患およびがん全体との関連を見た研究では、果物と脳血管疾患との間に負の関連が見られたのに対し、がん全体との間には特に関連は見出されなかった。
・週1回未満に比べて週1-2回、3-4回、ほぼ毎日摂取するグループのリスクは黄色野菜では摂取頻度に応じて段階的に低下。しかし、緑色野菜、他の野菜、果物においては週1-2回摂取すれば、それ以上頻度を増やしてもリスク低下は週1-2回の場合と同等。
・大腸がんにおいて、野菜・果物はリスク低下と関連していなかったが、食物繊維の最も摂取量の少ないグループは、最も摂取量の多いグループに比べて2.3倍に上昇。
・食道・胃・肺がんは、いずれも喫煙との関連が強く、食道がんは飲酒との関連が強いので、まずは禁煙と節酒が優先されるが、脳卒中や心筋梗塞等をはじめとする生活習慣病全体にも目を向けると、野菜・果物を毎日とることがすすめられる。
●摂取量
・世界がん研究基金(WCRF)、米国がん研究協会(AICR)は、野菜・果物を少なくとも400gとることを推奨。
”健康日本21”では、1日あたり野菜を350gとることを目標。
果物もあわせた目安としては、野菜を小鉢で5皿分と果物1皿分を毎日食べる心がけで、400g程度になる。
・2009年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の野菜・果物の平均摂取量は410gとなっている。
※野菜・果物のがんに対する効果については以下の記事参照。
・果物の効用
・野菜、果物全般の健康効果の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
・カロテノイド、リコペンの概要、効果、健康影響
・食道がんのリスクが低くなるのは”ほぼ確実”、胃および肺がん(果物のみ)のリスクが低くなる”可能性がある”。
・野菜・果物と脳血管疾患およびがん全体との関連を見た研究では、果物と脳血管疾患との間に負の関連が見られたのに対し、がん全体との間には特に関連は見出されなかった。
・週1回未満に比べて週1-2回、3-4回、ほぼ毎日摂取するグループのリスクは黄色野菜では摂取頻度に応じて段階的に低下。しかし、緑色野菜、他の野菜、果物においては週1-2回摂取すれば、それ以上頻度を増やしてもリスク低下は週1-2回の場合と同等。
・大腸がんにおいて、野菜・果物はリスク低下と関連していなかったが、食物繊維の最も摂取量の少ないグループは、最も摂取量の多いグループに比べて2.3倍に上昇。
・食道・胃・肺がんは、いずれも喫煙との関連が強く、食道がんは飲酒との関連が強いので、まずは禁煙と節酒が優先されるが、脳卒中や心筋梗塞等をはじめとする生活習慣病全体にも目を向けると、野菜・果物を毎日とることがすすめられる。
●摂取量
・世界がん研究基金(WCRF)、米国がん研究協会(AICR)は、野菜・果物を少なくとも400gとることを推奨。
”健康日本21”では、1日あたり野菜を350gとることを目標。
果物もあわせた目安としては、野菜を小鉢で5皿分と果物1皿分を毎日食べる心がけで、400g程度になる。
・2009年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の野菜・果物の平均摂取量は410gとなっている。
※野菜・果物のがんに対する効果については以下の記事参照。
・果物の効用
・野菜、果物全般の健康効果の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
・カロテノイド、リコペンの概要、効果、健康影響
熱い飲食物
・熱い飲食物の摂取により、食道がんのリスクが上がるのが”ほぼ確実”と評価されている。
・飲食物を熱い状態でとることは食道がんのみならず食道の炎症のリスクを上げることを示す研究結果は多数ある。
・飲食物を熱い状態でとることは食道がんのみならず食道の炎症のリスクを上げることを示す研究結果は多数ある。
加工肉・赤肉
・ハム、ソーセージなどの加工肉および赤肉(牛・豚・羊など。鶏肉は含まない)は大腸がんのリスクを上げる”可能性がある”。
・国際的な基準では赤肉の摂取は1週間に500gを超えないようにすすめている。
※以下の記事も参照。
飽和脂肪酸、肉の摂取と健康への影響の”肉の摂取とがんのリスク”
・国際的な基準では赤肉の摂取は1週間に500gを超えないようにすすめている。
※以下の記事も参照。
飽和脂肪酸、肉の摂取と健康への影響の”肉の摂取とがんのリスク”
コーヒー
・肝がんおよび大腸がんで、コーヒーががんのリスク低下と関連することについて、それぞれ”ほぼ確実”、および”可能性あり”と判定されている。
・現段階では、飲む習慣のない人が無理して飲むことはすすめられていない。
※コーヒーとがんとの関連については以下の記事も参照。
コーヒーの健康効果
・現段階では、飲む習慣のない人が無理して飲むことはすすめられていない。
※コーヒーとがんとの関連については以下の記事も参照。
コーヒーの健康効果
飲酒
●国際評価
・口腔、咽頭、喉頭、食道、大腸(男性)、乳房のがんのリスクを上げることが”確実”。
・肝臓、大腸(女性)のがんのリスクを上げることも”ほぼ確実”。
・刊行論文のメタ解析と、世界疾病負担研究との結果より、飲酒が非感染性疾患死亡に寄与する割合は3.4%と試算。
特にがん、高血圧・出血性脳卒中・心房細動を含む心疾患、脂肪肝・アルコール性肝炎・肝硬変などの肝疾患、膵炎では関連が強く見られる。
●日本人を対象とした研究
・飲酒によりがん全体のリスクが上がることは”確実”と評価。
部位別には、肝臓、大腸、食道のがんにおいてその影響が”確実”。
・飲む場合は1日あたりアルコール量に換算して約23g程度(日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウィスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度)、週150g程度の量にとどめるのがよい。
適量の飲酒が心筋梗塞や脳梗塞を予防する効果もあるので、1日平均23g以下にとどめるのが重要。
・飲酒が全がん罹患、死亡の原因として寄与する割合はそれぞれ男性で9%, 8.6%、女性で2.5%, 2.5%と試算されていて、男女共に喫煙・感染に次いで寄与の高い要因であることが示された。
※以下の記事も参照。
アルコールの効能、リスクの”アルコールとがんとの関連”、”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
・口腔、咽頭、喉頭、食道、大腸(男性)、乳房のがんのリスクを上げることが”確実”。
・肝臓、大腸(女性)のがんのリスクを上げることも”ほぼ確実”。
・刊行論文のメタ解析と、世界疾病負担研究との結果より、飲酒が非感染性疾患死亡に寄与する割合は3.4%と試算。
特にがん、高血圧・出血性脳卒中・心房細動を含む心疾患、脂肪肝・アルコール性肝炎・肝硬変などの肝疾患、膵炎では関連が強く見られる。
●日本人を対象とした研究
・飲酒によりがん全体のリスクが上がることは”確実”と評価。
部位別には、肝臓、大腸、食道のがんにおいてその影響が”確実”。
・飲む場合は1日あたりアルコール量に換算して約23g程度(日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウィスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度)、週150g程度の量にとどめるのがよい。
適量の飲酒が心筋梗塞や脳梗塞を予防する効果もあるので、1日平均23g以下にとどめるのが重要。
・飲酒が全がん罹患、死亡の原因として寄与する割合はそれぞれ男性で9%, 8.6%、女性で2.5%, 2.5%と試算されていて、男女共に喫煙・感染に次いで寄与の高い要因であることが示された。
※以下の記事も参照。
アルコールの効能、リスクの”アルコールとがんとの関連”、”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
体型(BMI値)
●国際評価
・肥満は、大腸、乳房(閉経後)、食道、子宮体部、腎臓、膵臓の各部位のがんのリスクを上げることは”確実”と評価。
・主に西ヨーロッパと北米の研究では、BMI 22.5-25を底とするU字形の関連。
BMI 25以上の過体重が脈管系疾患、がんに寄与する割合はそれぞれ米国で29%、8%、英国23%と6%と試算された。
・アジアの研究では、日本、中国、韓国を含む東アジアにおいてBMI 22.6-27.5を底とするU字形の関連。
がん死亡、心血管系疾患死亡、その他の死因による死亡でも同様の関連。
一方、インドとバングラデッシュでは低BMIにおいてこれらのリスク上昇をみとめたものの、高BMIにおいてはリスクは上昇せず、同じアジアでも国によって結果が異なることが示された。
●日本人を対象とした研究
・肥満は、閉経後乳がんのリスクを上げることは”確実”と評価。
大腸がんおよび肝がんに対しては”ほぼ確実”と評価。
・がん全体としてみたときは、男性においてBMI 18.5未満のやせについて、また、女性においてBMI 30以上の肥満においてリスクが上昇することは”可能性あり”と評価。
・BMIが1増加するごとに大腸がんのリスクは男性で1.03倍、女性で1.02倍、閉経前・閉経後乳がんはそれぞれ1.03倍、1.05倍上がる。
・BMIと全死亡、がん死亡(男性)のリスクとの間には逆J字形の関連。
女性においては30以上の肥満でのみがん死亡のリスク上昇が見られ、男女ともBMI 21-27あたりが最も全死亡のリスクが低い範囲であることが示された(Sasazuki et al. J Epidemiol 2011)。
・BMIとがん全体の発生リスクとの関係を調べた、日本人中高年期(40~69歳)男女約9万人を対象とした研究では、男性の21未満のやせでのみ、リスクの上昇が認められた。
また、別の日本人中高年期(40~64歳)男女約3万人を対象とした研究では、女性の27.5以上の肥満でのみ、リスクの上昇が認められた (Kuriyama et al. Int J Cancer 2005)。
・上記のように、肥満とがん全体との関係は、欧米とは異なり、日本人においてはそれほど強い関連がないことが示されている。
むしろ、やせによる栄養不足は免疫力を弱めて感染症を引き起こしたり、 血管を構成する壁がもろくなり、脳出血を起こしやすくしたりすることも知られている。
その一方、糖尿病、高血圧、高脂血症等は、やせればやせる程リスクが低下する。
●日本における現状と対策
・2009年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上でBMIが25以上である割合は、男性31%、女性21%、一方、18.5未満の痩せの割合は、男性4.4%、女性11%と推定。
・肥満については、BMIが30を超えないと明らかなリスクの増加が認められていないが、日本人において30以上である割合は、男性4.3%、女性3.5%にすぎないので、肥満対策によるがん予防効果は、小さいと思われる。
・むしろ、日本人中高年においては、BMIが21未満の痩せにおけるがんのリスクの増加も示され、その割合も20%を上回っているために、痩せ対策によるがん予防効果の方が大きい可能性がある。
・肥満対策は、糖尿病や高血圧などの予防に有効である一方、痩せ対策は、感染症や脳出血の予防にも効果があるので、肥満、および、痩せの割合を減少させることが重要な課題。
・肥満は、大腸、乳房(閉経後)、食道、子宮体部、腎臓、膵臓の各部位のがんのリスクを上げることは”確実”と評価。
・主に西ヨーロッパと北米の研究では、BMI 22.5-25を底とするU字形の関連。
BMI 25以上の過体重が脈管系疾患、がんに寄与する割合はそれぞれ米国で29%、8%、英国23%と6%と試算された。
・アジアの研究では、日本、中国、韓国を含む東アジアにおいてBMI 22.6-27.5を底とするU字形の関連。
がん死亡、心血管系疾患死亡、その他の死因による死亡でも同様の関連。
一方、インドとバングラデッシュでは低BMIにおいてこれらのリスク上昇をみとめたものの、高BMIにおいてはリスクは上昇せず、同じアジアでも国によって結果が異なることが示された。
●日本人を対象とした研究
・肥満は、閉経後乳がんのリスクを上げることは”確実”と評価。
大腸がんおよび肝がんに対しては”ほぼ確実”と評価。
・がん全体としてみたときは、男性においてBMI 18.5未満のやせについて、また、女性においてBMI 30以上の肥満においてリスクが上昇することは”可能性あり”と評価。
・BMIが1増加するごとに大腸がんのリスクは男性で1.03倍、女性で1.02倍、閉経前・閉経後乳がんはそれぞれ1.03倍、1.05倍上がる。
・BMIと全死亡、がん死亡(男性)のリスクとの間には逆J字形の関連。
女性においては30以上の肥満でのみがん死亡のリスク上昇が見られ、男女ともBMI 21-27あたりが最も全死亡のリスクが低い範囲であることが示された(Sasazuki et al. J Epidemiol 2011)。
・BMIとがん全体の発生リスクとの関係を調べた、日本人中高年期(40~69歳)男女約9万人を対象とした研究では、男性の21未満のやせでのみ、リスクの上昇が認められた。
また、別の日本人中高年期(40~64歳)男女約3万人を対象とした研究では、女性の27.5以上の肥満でのみ、リスクの上昇が認められた (Kuriyama et al. Int J Cancer 2005)。
・上記のように、肥満とがん全体との関係は、欧米とは異なり、日本人においてはそれほど強い関連がないことが示されている。
むしろ、やせによる栄養不足は免疫力を弱めて感染症を引き起こしたり、 血管を構成する壁がもろくなり、脳出血を起こしやすくしたりすることも知られている。
その一方、糖尿病、高血圧、高脂血症等は、やせればやせる程リスクが低下する。
●日本における現状と対策
・2009年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上でBMIが25以上である割合は、男性31%、女性21%、一方、18.5未満の痩せの割合は、男性4.4%、女性11%と推定。
・肥満については、BMIが30を超えないと明らかなリスクの増加が認められていないが、日本人において30以上である割合は、男性4.3%、女性3.5%にすぎないので、肥満対策によるがん予防効果は、小さいと思われる。
・むしろ、日本人中高年においては、BMIが21未満の痩せにおけるがんのリスクの増加も示され、その割合も20%を上回っているために、痩せ対策によるがん予防効果の方が大きい可能性がある。
・肥満対策は、糖尿病や高血圧などの予防に有効である一方、痩せ対策は、感染症や脳出血の予防にも効果があるので、肥満、および、痩せの割合を減少させることが重要な課題。
喫煙
●国際評価
・肺がんだけでなく、口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、大腸、膵臓、肝臓、腎臓、尿路、膀胱、子宮頸部、鼻腔、副鼻腔、卵巣のがん及び、骨髄性白血病に対して発がん性があることが”確実”と評価されている。
●日本人を対象とした研究
・食道、肺、胃、膵臓、子宮頸部に対しては”確実”、肝臓に対しては”ほぼ確実”、大腸(直腸)と乳房に対しては”可能性あり”という評価。
・非喫煙者に対する喫煙者のがん全体のリスクは、5つのコホート研究のメタアナリシスにより1.5倍(男性:1.6倍、女性:1.3倍)と推計。
また、日本人を対象とした複数のコホート研究を統合したデータに基づくと、がん死亡のリスクは、男性2倍、女性1.6倍程と推計。
上述の相対リスクと喫煙者の割合などから推計すると、日本人のがん死亡の約20%~27%(男性では30~40%程度、女性では3~5%程度)は喫煙が原因であり、喫煙していなければ予防可能であったと言える。
・肺がんだけでなく、口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、大腸、膵臓、肝臓、腎臓、尿路、膀胱、子宮頸部、鼻腔、副鼻腔、卵巣のがん及び、骨髄性白血病に対して発がん性があることが”確実”と評価されている。
●日本人を対象とした研究
・食道、肺、胃、膵臓、子宮頸部に対しては”確実”、肝臓に対しては”ほぼ確実”、大腸(直腸)と乳房に対しては”可能性あり”という評価。
・非喫煙者に対する喫煙者のがん全体のリスクは、5つのコホート研究のメタアナリシスにより1.5倍(男性:1.6倍、女性:1.3倍)と推計。
また、日本人を対象とした複数のコホート研究を統合したデータに基づくと、がん死亡のリスクは、男性2倍、女性1.6倍程と推計。
上述の相対リスクと喫煙者の割合などから推計すると、日本人のがん死亡の約20%~27%(男性では30~40%程度、女性では3~5%程度)は喫煙が原因であり、喫煙していなければ予防可能であったと言える。
身体活動
●国際評価
・身体活動を上げること(運動)は、大腸(結腸)がんのリスクを下げることは”確実”、また、閉経後乳がん、子宮体がんのリスクを下げることは”ほぼ確実”、と評価されている。
●日本人を対象とした研究
・日本人を対象とした8研究に基づいて、身体活動は、大腸(結腸)がんのリスクを下げることは”ほぼ確実”と評価している。
・身体活動を上げること(運動)は、大腸(結腸)がんのリスクを下げることは”確実”、また、閉経後乳がん、子宮体がんのリスクを下げることは”ほぼ確実”、と評価されている。
●日本人を対象とした研究
・日本人を対象とした8研究に基づいて、身体活動は、大腸(結腸)がんのリスクを下げることは”ほぼ確実”と評価している。
部位別がん罹患数
予測がん罹患数(2014年)
(部位) がん全体に占める割合 (男性)(女性) 胃 18% 11% 肺 18% 10% 前立腺 15% 乳房 23% 子宮 7% 卵巣 3% 大腸 15% 15% 肝臓 6% 4% 食道 4% 1% 膵臓 4% 5% 膀胱 3% 1% 腎・尿路 (膀胱除く) 3% 2% 悪性リンパ腫 3% 3% 胆嚢・胆管 3% 3% 口腔・咽頭 3% 2% 皮膚 2% 3% 白血病 2% 1% 甲状腺 1% 3% 喉頭 1% <1% 多発性骨髄腫 1% 1% 脳・中枢神経系 1% 1% 全患者数 501,800 380,400
・2014年の予測罹患数は、男性50万、女性38万。2010年と比較すると、合計で約8万増加。
・男性では胃、肺、前立腺、大腸、肝臓の順。
女性では乳房、大腸、胃、肺、子宮の順にがん罹患数が多い。
男性では前立腺が大腸を抜いて第3位になった。また、第2位の肺がんが第1位の胃がんとほぼ同数となった。
女性では順位は変わらなかったが、第4位の肺がんが第3位の胃がんの罹患数に近づいた。
多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
●肥満度(BMI)とがん全体の発生率との関係について ・調査開始時の身長と体重から肥満度(BMI)を算出し、それを7グループに分けて、その後のがん全体の発生率を比較した。 ○がんの発生率の結果 ・男性では、BMIが21-29では、がん全体の発生率はほとんど同じだったが、BMIが21未満のやせているグループと30以上の非常に太っているグループで発生率が高くなるU字型の傾向がみられた。 特に、非常にやせているグループでのがん全体の発生率の増加は顕著で、BMIが19未満の最もやせているグループの発生率は、BMIが23-24.9のグループと比較して、約30%高くなっていた。 よく、がんになった結果やせたのではないか、といわれるが、研究が始まって数年間以内にがんにかかった人を除いても、同じ結果だったので、もともと非常にやせているということで、将来がんになりやすいのではないかと考えられる。 ・女性では、太っていてもやせていても、その後のがん全体の発生率には特に違いがみられなかった。 ○がんの死亡率の結果 ・やせているグループと太っているグループでがんの死亡率が増加するU字型の傾向で、罹患率との関係よりもやせによる死亡率の増加がより顕著だった。 ○推察 ・日頃から非常にやせている人はそれほどやせていない人と比べてがんになりやすいと同時に、がんになった後の回復力も弱いのではないかと推察される。
●5つの健康習慣とがんのリスクについて ・がんとの関連が重要視されている喫煙、飲酒、食事、身体活動、肥満度の5つの要因の組み合わせによって個人の10年間でがんを発生する確率を求めた。 ○全体の結果 ・男性では、単独での効果が高いものから並べると、非喫煙、節酒、塩蔵品を控える、活発な身体活動、適正BMIの順であった。 ・女性の場合、非喫煙の次は活発な身体活動、適正BMIとつづき、節酒、塩蔵品を控える、は下位という結果だった。 ○男女の比較 ・45歳、55歳では男女差はあまりないか、女性の方ががんの発生確率は高い傾向。 子宮頸がんや乳がんなど、比較的若年で発生するがんが女性には含まれるためと思われる。 ・60歳以上になると、全体に男性の方が女性に比べて同じ習慣でもがんを発生する確率が高まる結果となった。 特に60歳以上でいずれの健康習慣もない人のがん発生確率は男性は女性の2倍だった。 さらに、男性においては5つの健康習慣のいずれも実践しない人は、全てを実践する人の2倍の確率であった。いずれにしても健康習慣の実践の差は年数を経るごとに広がってしまうのが現実。
●アジア人における肉摂取と循環器死亡との関連 ・バングラデシュ、中国、日本、韓国、台湾の8集団(計296,721人)を対象にして、肉摂取と循環器死亡の関連を調べた。 ○肉類摂取と死亡との関連 ・全肉摂取と全死因死亡、がん、循環器死亡との関連は男女ともに認められなかった。 ・赤肉摂取により男女ともに全死因死亡のリスクが低下することが分かった。 さらに赤肉摂取は男性の循環器死亡、女性のがん死亡低下とも関連することが分かった。 ・男女両方において鶏肉摂取と全死因死亡のリスク低下、女性におけるがん死亡のリスク低下もみられた。 ・女性において、魚介類摂取により全死因死亡と循環器死亡のリスクが低くなった。 ○西欧諸国と異なる傾向の理由の推測 ・近年アジア諸国ではがんと循環器死亡が増加し、幾つかのがんによる死亡率は西欧諸国に近づきつつある。 アジアでの肉類摂取増加傾向を踏まえ、動物性脂肪の多い西欧型食生活ががんや循環器死亡増加の原因ではないかと議論されてきた。 しかし今回の結果では肉類摂取と死亡率増加との関連は見られなかった。 アジア人集団では関連が見られなかった理由として以下が考えられる。 ・ほかの社会経済要因、ライフスタイルの変化や肥満が大きく関係している可能性がある。 ・食生活の変化がアジアの多くの地域では進行中である。 ・アジアでは肥満、高血圧、喫煙など他の危険因子が、がんや循環器死亡増加の主要リスクである。
ネットニュースによる関連情報
●運動によって13種のがんのリスク低下 ・余暇の高い身体活動レベルの運動を行っていた者は、低い者に比べ26種類のうち13種類のがん(食道線がん、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、子宮がん、骨髄性白血病、骨髄腫、大腸がん、頭頸部、直腸がん、膀胱がん、乳がん)の発症率が低かった。 ・身体活動レベルは前立腺がんを5%高め、悪性黒色腫を27%高めた。これは、米国の紫外線レベルが高い地域で関連が認められたが、低い地域では関連がなかったことが示された。